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柳原白蓮(歌人)

いまの女性たちは、りこうに生きているようね。

結婚はもっと、純粋なものでしょうに。

愛に結ばれているかどうか。

何となし、結婚そのものが、ぼやけているようだ。

夫婦とも、ほかにひかれる者があったとしても、

そのまま、結婚をつづけてしまっている。

さいしょから平行線じゃあないか。

つまらない。

青春は、もっと潔癖なものさ。

真剣に生きていきたいと思うね。

―柳原白蓮―




柳原白蓮は、菊池寛の「真珠夫人」のモデルになった人です。

「真珠夫人」といえば、昼ドラで、横山めぐみがドロドロの愛憎劇を繰り広げていましたが、観てましたか?

今回は、柳原白蓮です。







柳原白蓮(本名あきこ)は、明治18年(1885年)伯爵柳原前光の妾の子として、東京に生まれる。

大正天皇の従姉妹にあたる血筋である。

あきこは、生後7日目に、実母から引き離され、柳原家の次女として籍に入る。

その日のうちに乳母に預けられるなど、人並みの愛情は得がたい環境だった。




9歳のとき、北小路家の養女にだされる。

15歳になったあきこは、思春期真っ盛りの、7歳年上の北小路家の息子資武の好色の前にさらされるようになる。

年老いた両親の目を盗んで、折あらば、あきこに迫ろうとする。

他にひとの気配がないときをねらって、襖(ふすま)をあけて入ってくる。

羽交締めにされ、畳の上に押し倒され、犯される。

「おれは、お前と、めおとになる。知らないのか。妾の子を貰ってやるのだぞ。生意気いうな。」


あきこは、はじめて知る出自に、打ちひしがれた。

いつ資武がおそってくるかもしれぬ日々が続く。

あきこの異変に気づいた北小路家は、むりやり、華族女学校を中退させ、北小路資武と祝言をあげさせた。

夫は、あきこを性を目的とするおもちゃのように扱った。

憎悪の果てのような男と女のまじわりを、5年も、あきこは耐え続けた。

16歳のとき、男児を出産するが、母親としての自覚は持てず、夫への嫌悪感ばかり強くなり、19歳のときに破婚、実家に戻る。




破婚のあきこは、家に入れてもらえず、幽閉に等しい生活を余儀なくされる。




明治44年(1911)、九州一の炭鉱王、伊藤伝右衛門と再婚し、福岡に移り住む。

あきこ27歳、伝右衛門52歳。

「金で買われた華族の女」と世間はいう。

結納金は、あきこの兄が貴族院議員に出馬するための、政治資金に流れた。

どこにも行く場所がない。生活の力さえあれば・・・・。

あきこは涙をこらえた。




あきこは、ことごとく伝右衛門に裏切られた。

外にも内にも妾を何人もかかえ、妾兼女中が、家の中をとりしきっている。

子供はひとりもいないと聞かされながら、誰が生んだかもわからない子供が何人もいた。

しかも、伝右衛門は、睾丸の手術をし、子種がない状態であった。

当然得られると考えていた子供という存在も否定された。

自分の生きがいを賭けようと思っていた女学校設立の夢も断ち切られた。




華族の娘と無学粗暴の夫。

生まれも育ちも違いすぎる二人。

愛のない結婚生活。




歓びを得ることの出来ない毎夜の性が、あきこに肉体的苦痛をもたらす。

あきこはまるで自分は娼婦のようだと思う。娼婦と同じ行為。

それならば今、自分が課せられている行為を娼婦が代わってしてもいいことではないか。

あきこは、若い妾を伝右衛門にあてがう。

枕を三つ並べて寝る。同じ寝所で、夫が妾を抱く。

あきこが自ら招きよせた地獄である。




その悲惨な環境から逃れるためか、いつしか、あきこは短歌の世界に深く傾倒しはじめるようになっていく。

短歌のなかで、気ままに恋し、姦淫する自由をもとめた。

佐々木信綱の門下生となり、白蓮として頭角を現していく。




あきこは、大正8年(1919)、戯曲「指鬘外道(しまんげどう)」を発表する。

ある日、その上演依頼のために、宮崎龍介が訪れる。

運命的な出会いであった。

彼は、東大帝大法学部の学生であり、あきこよりも7歳年下の男。

二人は、間もなく書簡を取り交わすようになる。

上京の折に逢瀬を重ね、大正10年の真夏の京都で、はじめて身体の関係を結んだ。

あきこが、36歳にして、はじめて自ら望み、身も心も投げ入れて漂った官能の世界。




ある日、あきこはつきあげるような吐き気に襲われる。

龍介の子を宿したことに気づく。

知らせてはいけない。

龍介は今秋、大学を卒業したばかりの若い男なのだ。

彼には未来というものが溢れるほどある。

妊娠により龍介がどういう態度をとるか、そのことを知るのが怖い。

おそらく龍介は子供をはらんだことを喜ばないだろう。

困惑のあまり青ざめるような気がする。

あきこは龍介のそんな表情をみるくらいなら死んでしまいたいとさえ思う。

そして、あきこは、龍介に告げぬまま、ひとり中絶する。




龍介はいう。

「きっといつか二人で暮らせるようにする。
自分は決していい加減な気持ちであなたを愛しているのではない。」


この言葉をかわしているのはあきこだった。

龍介を愛しているのは何ひとつ疑うことのない真実である。

が、その未来を引き受ける勇気があきこにはない。

男の若さが怖い、心変わりが怖い。

自分は、もう36歳だ。

そこから、這い上がる力などもうありはしない。




そんななか、龍介の肺に影が見つかる。

龍介の死がちらつく。

あきこは、居ても立ってもいられなくなる。


「生きましょう。二人で一緒に・・・逃げましょう。
あなたの元へ逃げます。
こんなに長いこと愚図愚図していて、私が本当に馬鹿でしたわ。
もう後戻りはできないもの。私はあなたと逃げます。」



あきこは、再び龍介の子を宿す。

二人の前に姦通罪という壁が立ちふさがる。

龍介の友人たちで出は計画がねられ、あきこ、10年間生活をした伊藤家を出奔、龍介と駆け落ちする。




二日後、

「私は金力をもって女性の人格的尊厳を無視する貴方に永久の訣別を告げます」

という公開絶縁状を朝日新聞に掲載する。

伊藤は、毎日新聞に反論を載せ、世論は非常に沸いた。

これが世にいう「白蓮事件」である。




あきこは、華族からの除籍と財産没収により、離婚を勝ち得る。

だが、世間体を重んじる柳原家は、あきこを龍介から引き離し、監禁状態に置いた。

世間の非難も相俟って、何とかして二人を添えさせまいとする処置が次々に打たれてしまう。

そんななか、あきこは、男児香織を出産する。




大正12年(1923)関東大震災が起こる。

柳原家の関係で、あきこと香織が預けられていた中野家も焼けてしまう。

これを聞きつけた龍介は、あきこらを迎えにいき、柳原家もあきこらを返すということで、ようやく、あきこと龍介は一緒に暮らすようになった。




婚姻届を提出したのは大正14年、二人が歴史に残る恋の逃避行をしてから、4年の歳月が流れていた。

その年、長女蕗苳子(ふきこ)が誕生する。




幸せな生活がはじまったのも束の間、龍介は結核を患って、病身の身になってしまう。

これまでの生活とは一転貧しい生活を送らざるを得なくなる。

文筆活動で一家の生計を支える。生活のために物を書く。

ぎりぎりの生活が、あきこの一身にかかっていた。

病床の龍介にかわって、政治活動に協力した。

戦争で、香織を亡くすも、これを機に平和運動に参加し、世界連邦婦人部の中心となり活躍する。

生活の力さへあれば・・・と嘆いていたあきこが、変わった。

自分の足で歩き始めたのである。

貧しい労働者を隣人として生きるようになったのである。




昭和34年脳貧血で倒れ、2年後緑内障で両眼とも失明し、龍介に支えられて生きる日を重ねた。

昭和42年(1967)享年81歳でこの世を去る。




あきこの死後、龍介は語る。

「私のところに来てどれだけ私が幸せにしてやれたか、

それほど自信があるわけではありませんが、

少なくとも私は伊藤家や柳原の人々よりは、

あきこの個性を理解し援助してやることができたと思っております。

波乱に富んだ風雪の前半生をくぐり抜け、

最後は私のところに心やすらかな場所を見つけたのだと思います。」




白蓮れんれん
白蓮れんれん
林 真理子/中央公論社 (1998/10)


恋する罪びと
恋する罪びと
田辺 聖子/PHP研究所 (2003/07)


夫と妻のきずな〈上〉激動の昭和を生きた夫婦の記録
中島 力/国書刊行会 (2003/07)


恋の華・白蓮事件
永畑 道子/新評論 (1982/11)


恋ひ歌―宮崎龍介と柳原白蓮
斉藤 憐/而立書房 (2003/05)










私の友人の夫は、何棟ものビルを所有し、彼女は、経済的にも、何の不自由もない。

彼女は、子宝にも3人めぐまれ、夫の両親とも上手くいっていた。

誰もがうらやましがるような幸福を手に入れていた。




が、彼女が41歳になったとき、25歳の板前と駆け落ちした。




2年後のある日、「るるちゃん、るるちゃん」という声が・・・・・。

彼女だった。最初誰だかわからなかった。

るる「何してるんですか?
    こんなところで、あれから大騒ぎでしたよ。」

彼女「すぐそこのマックで、アルバイトしてるの?」

るる「え、マック?・・・・・・・。」

彼女「彼と店を持つのが夢なの」

るる「・・・・・・・・・・・」

彼女「生まれてきて、今が一番幸せよ。るるちゃんも、
    私ぐらいの年齢になればわかるわよ」




彼女のしたことは、決して褒められたことではない。

家族を捨てた。3人の子どもたちを捨てたのだから。




でも、輝いている。

あんなに輝いている彼女を見たことはない。

20代にしかみえない。既に40歳を超えている。

短パン、Tシャツ姿でも、全く違和感がない。

キレイなのだ。内面から溢れでる美しさで輝いている。

何が、彼女をあそこまで変えたのだろうか。

世間が良しとする価値観は、生を真剣に生きぬくことと、相反するのかもしれない。

彼女の輝きが、それを物語っている。



私は、まだ、当時の彼女の年齢にも達していない。

だから、わからない。

だが、私が、彼女と同じ立場に立ったとき、どうするだろうか。

家族を捨ててまで、子供を捨ててまで、自分の人生を生きることを選択するだろうか。


応援GO!GO!


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コメント
この記事へのコメント
トラックバックありがとうございます
とても丁寧なブログですね。
びっくり&感心しました。
文章もわかりやすくて、
普段は、何度もスクロールするような
長い文章は苦手にしてるのですが、
全然苦になりませんでした。(^^*)

自分が女性なので、
女性の生き方について感じることのある本や文章が好きです。

時々、のぞかせてもらいますね。(^^*)

2005/08/18(木) 14:52:23 | URL | ことの #-[ 編集]
TBどうも。

明治天皇批判で引用した女性のコメントに、こんな、あまりにも文学的な色恋沙汰があったとは驚きです。勉強になりました。

彼女の事が題材の映画を観てみたいです。
2005/08/20(土) 01:57:30 | URL | 死ぬのはやつらだ #-[ 編集]
ステキなブロクですね
柳原白蓮は私も大好きです。女性にとってあれほど抑圧された時代、全てを投げ打って宮崎竜介の愛に走った白蓮はすごい勇気の持ち主でした。彼らを応援した支援者がいたこともラッキーでした。
この事件では女の幸せとはなんだろう・・って考えさせられません?
まあ、白蓮ほどひどい夫を持った女性は今時いないだろうと思いますが(DVとかはいるが・・)本当の自分を生きるとはどういうことか・・
多くの女性達は白蓮の生き方を非難もするだろうが反面羨ましいとも思ってるはず。
あなたのお友達も白蓮も駆け落ちした後にどう生きるかが一番正念場でしょう。少なくとも白蓮は駆け落ちした後、女性運動家として有名になりました。働いたことも無い女性が筆一本で家族を支え、たくましく生きた。そんな女性がいたことを私は嬉しく思い、勇気をもらうのです。
るるさんはまだ若いのでしょうね。
人生にはすごいリスクを背負ってでもどうしようもないことってあるのだと私もこの年になってやっとわかるようになりました。
年を重ねるってステキなことね。
2005/08/25(木) 09:48:38 | URL | おきよ #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2005/09/10(土) 11:52:42 | | #[ 編集]
大分県民オペラが今創作オペラとして「白蓮」をとりあげ、平成19年上演を計画中です。
2005/10/01(土) 22:39:28 | URL | #-[ 編集]
始まりは「白蓮」
こんにちは
「白蓮」で検索してあなたのページに出会いました。とてもよく出来たブログで感心しました。
あなた自身はどんな恋愛をなさっているのでしょうか。女性としての生き方を真剣に考えていらっしゃる様子が見えて、大変興味を覚えました。これからもこのブログを充実させながら、素敵な人生を送って行かれる事でしょうね。
女に生まれたことを感謝しつつ、お互い頑張りましょうね。
2006/01/13(金) 22:47:55 | URL | ゆっこ #-[ 編集]
大分県民オペラ
大分県民オペラのホームページです。

http://www6.ocn.ne.jp/~opera67/
2006/08/27(日) 23:22:17 | URL | #YK3S2YpI[ 編集]
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